
別府を愛し、別府を面白くする“べっぱー”たち

ねんごろ力と新旧の混合
この街は発想と活力の泉源。
アートNPO「BEPPU PROJECT」の活動の一環として2023年1月に開設した別府市創造交流発信拠点「TRANSIT」。広く文化・芸術に関する活動を行い、地域や企業の課題を解決する人材とのマッチング、展示やイベント情報の発信など、別府への移住を希望するアーティスト・クリエイターの支援がメイン。そこで働く安藤さん、宮崎さんも実は移住者。「よそ者の私に親切に接してくださる“ねんごろ力”に触れ、暮らしをイメージできた」「古さと新しさが混在し、挑戦する力が湧く」とコメント。地元で生まれ育った阿部さんは「この仕事を始めて、まだまだ知らない魅力に溢れていることに気付かされました」と笑顔で話してくれた。

「アーティスト・クリエイターのみなさん、別府で制作しませんか?」と移住・定住を促進する「TRANSIT」。彼らの活動により別府はアートも盛ん

美しい風景に浸り
寛容でいられる日々を。
1927(昭和2)年創業と別府でも随一の老舗。街の文具店として地元で長く親しまれているのはもちろん、別府の風景からインスピレーションを得たインク、万年筆などオリジナルのステーショナリーを展開。別府の魅力の発信にも力を入れている。
4代目として店に立つ明石佳子さんは故郷である別府についてこう話す。「オリジナルインクで海、空、山、町並みを表現しているようにふとした風景が美しいのは別府の日常であり、自慢です。別府大学の学生さんにご協力いただき、ボールペンやマスキングテープを作った経験もあり、別府は温かく受け入れる“寛容”さが浸透していると実感しています」

「万年筆、ガラスペン、そえぶみ箋などオリジナル文具は多彩。2階では画材や額縁など専門的な商品も販売。その品揃えの良さから県外から足を運ぶ人も

多様性は混沌から生まれた?
関心はあるけどほどよく。
「米軍駐屯地が存在し、引き揚げ船の港があり、さらに温泉開発の勢いが増した戦後の別府は混沌とした街だったそうです。それが多様性を認め、誰でも受け入れる今の別府に繋がっていると考えています」と切り出した花田さん。もともと熊本出身で、旅行で訪れ魅了されたのが別府に移住したきっかけ。ゲストハウスを開き、宿泊客向けにガイドを始め、それがまち歩きステーション「ARUCO DE BEPPU」の開設に繋がった。地元の人たちに熱望され「別府八湯温泉道名人会」の理事長まで務めているというからすごい。「観光客慣れしているからでしょうか。ほどよい距離感で人付き合いができるのも別府ならでは」

花田さんはピンクの作務衣、坊主頭から“別府の一休”の愛称で親しまれている。「ARUCO DE BEPPU」のツアーは別府のことを深く知ることができる

大分の地方都市にいながら
世界をじっくり見渡せる。
別府の温泉水で生豆を洗い、蒸すように焙煎したBeppu Onsen COFFEEを2024年12月にリリース。生まれも育ちも別府という高部さんの念願だった“コーヒー×温泉”を表現したプロダクトだ。
もともとリゾートホテルに勤め、地元に日常の癒やしをという思いから開業したスペシャルティコーヒー専門店。別府において先駆けで、かつ豆売りに特化しているだけあり地元客の利用が多い。そんな店を営む高部さんが考える別府の魅力とは。「海、山が近い自然に恵まれた環境に加え、国際色豊かな街になってきたこと。コーヒー産地、世界に思いを馳せられる環境が当たり前にあるのは幸せだと思います」

Beppu Onsen COFFEEはドリップバッグなのでちょっとした手土産にも良い。温泉水で生豆を洗っているからか、マイルドな味わいで飲みやすい

自然体で受け入れ上手
「湯の前に人は皆平等」に納得。
「父親が転勤族で、僕には故郷と呼べる場所がないんです」。そう話すリスニングバー「TANNEL」のオーナー・深川さんが別府に移り住んだのは、立命館アジア太平洋大学在学中に暮らした別府の居心地の良さ、楽しさから。卒業後、東京で代理店勤めを経験するも独立開業を目指し、別府で実現。2軒のバーを経営しながら、おんせん都市型音楽祭「いい湯だな!」を主催するなど、別府においてさまざまなシナジーを生み出している。「別府の人は受け入れ上手。観光地ではありますが地元の人々も元気で商売もしやすいと思います。音楽祭のコンセプトに『湯の前に人は皆平等』を掲げていますが、それを地でいく街」

深川さんが営むバーはDJブースがある「the HELL」と大人な雰囲気な「TANNEL」。音楽祭「いい湯だな!」は2023、2024年の2年連続で開催してきた

どこかで緩やかに繋がっている
支えられながら、支える暮らし。
別府市街中心部、銀座商店街の名物店「喫茶なつめ」。切り盛りする松尾さんは14年前に夫を亡くし、それから2代目として一人店に立ち続ける。「主人が担当していたコーヒーの焙煎など、勝手がわからないことや大変な点はもちろんありましたが、決して孤独ではありませんでしたよ」と松尾さん。それは60年以上続く店の歴史、そして常連さんとの絆があったから。「当然見知らぬ人を最初からすべて受入れるわけではないですが、人となりがわかって、互いに気持ちが伝わればもう仲間。そんな雰囲気が別府にはあると思います。だから私も常連さんたちに支えられ、一人でなんとかやってこれたのかな」と笑う。

創業は1963(昭和38)年。自家焙煎のコーヒー豆を使うなつめオリジナルブレンド、昔ながらのたまごサンド、小倉ホットサンドが名物メニュー
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